従来の柿渋製造における課題とは
古くから日本人の日常生活に利用されてきた柿渋ですが、昔ながらの柿渋には特有の発酵臭がある等、工業化による時代の移り変わりによって非常に扱いにくいものとなっていました。特に柿渋を使用することで発酵臭が移行してしまうことが課題となっていました。
製造過程においては、発酵中には香りの変化、熟成中には色の変化、貯蔵中には粘性の変化等があるため、天然物である柿渋は長期間の品質維持が困難であるという課題もありました。また、従来は調合(混合)することによってタンニン濃度をほぼ一定に揃えることができていましたが、高濃度の柿渋液の安定的な生産体制を整えるためにはこの方法では限界があると考えられていました。
3つの課題を解決するために
柿渋には主成分である柿タンニンが多く含まれていますが、他の夾雑物(発酵生産物)も多量に含んでいます。そこで私たちは、高分子である柿タンニンと他の柿渋成分との分子サイズの差に着目し、上記3つの課題の原因でもある低分子物質(他の夾雑物)を取り除いた柿渋の研究を開始しました。
その結果、従来の柿渋から高分子柿タンニンをろ過により分離させ、純度が高い精製柿渋の製造に成功しました。
膜分離の原理
上図のようにろ過膜を透過する低分子物質を取り除き、膜で阻止される「柿タンニンを多量に含む高分子物質」を回収できます。